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大阪モデル

 吉村大阪府知事が打ち出す大阪モデルで、昨日、コロナ感染拡大を受けて 5人以上の宴会自粛を府民に要請しました。

 当店では先般より、原則4名様までのご利用をお願いしています(事前予約があれば5名様以上も可)。目的は適切なソーシャルディスタンスの保持のためです。その手段として席数を間引き、半分の15席しか用意しないことにしました。それにより、カウンター席では隣との距離を1m~1m20cm確保。テーブル席では対面距離を2m確保、且つアクリルパーテーションで仕切っています。

 吉村知事の要請は概ね理解できるところです。政府が大人数での宴会を控えるよう呼びかけながら、では何人からが大人数なのかという定義を曖昧なままにして提示してないからです。吉村知事自身も「4名までと決める科学的根拠はない」と言っています。それでも何等かの線引きをすることで、行動様式を見直してもらいたいという積極的なアプローチは、無策な政府の姿勢よりも具体的で評価できます。

 しかし、目的と手段という観点から見れば、合理的理由がその手段に存るかと言えば疑問を感じる部分もあります。一律に5名以上の利用自粛を要請するのではなく、各店の席空間に合わせた運用を柔軟に求めるべきでしょう。60cm×60cmのテーブルに4人座るのはOKで、120cm×120cmのテーブルに5人座るのはNGというのでは、運用が硬直過ぎて現場の混乱を招きます。

 また、利用目的についても知事は言及しています。例外として家族・親族の集まりは5名を超えてもOKだと。お盆時期に各地方から参集するだろう親族の会食のほうがリスクあるように思えますが・・・。お客様の利用目的を店側が把握するのは困難ですし、過度な負担を強いられます。会社の飲み会でも、予約時に親族の集まりだといえば5人以上の宴会が可能となってしまいます。

 生活・行動様式の変革を求められている今、利用する側も事業者側も互いに協力・努力・自制が必要でしょう。私はお店の存在がお客様にとって必要なのだという自負を持って、お客様のための店を維持していくために何が必要かを日々考えております。

 私が吉村知事の立場なら、次のように府民に訴えるでしょう。

【会食は原則4名までの利用を要請するものとする。但し、適切なソーシャルディスタンスと感染防止策を講じている場合はこの限りではない。】

今後の営業

緊急事態宣言の発令を受けた自粛要請の範囲について、週明けには青森県知事の発表がなされる予定です。

東京都などに倣う部分もあるかもしれません。店舗内での飲食利用の時間制限があったとしても、テイクアウトに関しては現在と同様に営業可能なのではないかと考えています。

不要不急の外出を抑制するために、店としてどのような判断をすべきかは、正直悩ましいことです。一方で、外食の機会を奪われたお客様のために、生活衛生に資する目的でテイクアウトを続けることは意味があるとも思います。

スーパー、コンビニ、食料品店などは営業することを求められるでしょう。スーパーやコンビニでおにぎりや弁当を買うのと同様に、ナポリタン等を販売することも、消費者の選択肢を拡げる点では有益なことだと自負しております。

今後の営業体制については、知事の発表を踏まえて判断させていただきます。

さて、今日もナポリタンのご予約を頂いていています。ありがとうございます。これから、ケチャップまみれになってせっせとお作りりします。

緊急事態宣言発令

 トップ頁でもご案内しましたが、今後の営業体制については流動的に判断せざるを得ません。コロナ感染の拡大防止のために、最大限の努力と協力を惜しまないのは勿論ですが、お食事を提供するという「市民の生活衛生」に資するために、何ができるのかということも模索しております。

 先日、八戸料飲組合の会合に参加しました。組合として八戸市長に要望を取り纏めるという議題でした。その場で意見したことを抜粋して下記に掲載します。現時点での私の考えです。

 ①特措法24条に基づいて政府から要請のあった「接客を伴う飲食店利用の自粛」という文言は、曖昧な表現であり、私たち組合員の正常な営業に支障を来たしております。自粛要請の業態については、正確には、風営法の営業に属する「接待を伴う」業態の意図であることは明らかです。特措法の施行規則1111号には「キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール」と例示されていますが、飲食店とは何処にも記載されておりません。施行規則の範囲をむやみに拡大解釈して、消費者の危機感を徒に惹起させるものであり、甚だ不本意に感じております。

 つきましては、八戸市内で市民の生活衛生に資する健全な事業者のために、「接客」と「接待」の異動について、市民の幅広い理解を得られるよう行政のお力沿えを賜りたくお願いする次第です。

 ②コロナウィルス感染拡大防止のためには、緊急事態宣言が発令された7都府県に限らず、全国的に協力体制を構築する必要のあることは充分に理解している所であります。自粛要請は、「利用の自粛」であり、「営業の自粛」ではありません。しかしながら、消費者は要請に従って飲食店の利用を控える動きが日に日に拡大しています。

 この現状は、「営業の自粛要請」と実質的に何等変わりません。そこに私たち飲食店の営業に関する悩みがあります。ひとたび営業自粛の要請を受けたとすれば、市内飲食店は全店休業する覚悟があります。現に、自ら営業自粛している事業所もあります。「自粛」と営業損失に係わる「補償」を一体のものとして捉え、八戸市に於いても是非にその導入をご検討頂きたいと存じます。県、国にもこの窮状を訴える必要があるでしょう。

私たちは、一日も早い収束が訪れるよう最大限の協力を惜しまない所存です。

ナポリタン

コロナの自粛要請影響で、店内のご利用は目に見えて減っています。ナポリタンのテイクアウトを始めたところ、最近になって予約ご注文の電話が増えてきました。

応援してくださるお客様に、ただただ感謝の想いです。先程のお客様に「電話が増えている」旨お話したところ、「ツイッターで見て来ました」ということでした。お店としては、このHPでしか情報発信していないので(私、ガラケーなのでツイッターもフェイスブック等SNSはやってません)、お客様が情報をアップしてくださっているのですね。

大変ありがたいお話です。皆様にお礼申し上げます。

連載小説「黄昏と暁のみろく横丁」 shot.72

晩春の蒼い黄昏

 昨夜来の低気圧は昼過ぎまで猛威を振るい、総てを洗い流して東海上へ去っていった。澄んだ空気の中に、花木の芽吹きの匂いが時折感じられる。風はまだ強い。窪みに大きく残された水溜りは、蒼い空を絵画のように縁取っている。足元の水溜りを跨ぐとき、見下ろした地面に空があった。流れの速い雲を見ているうちに、どちらが天地なのか分からなくなってしまった。目眩を覚え、へなへなと水溜りに腰を落として溺れそうになった。遠くに霞む萌黄色の木立が、忍び寄る夕暮れと共に蒼く染まっていく。

 季節を一巡りして、二年目の営業に入った。

三年の契約期間は短いようで長い。屋台村を楽しみにして訪れるお客様の期待に、私は応えられてきただろうか。屋台村になくてはならない魅力ある存在へと育っていけるだろうか。

 カウンター営業の面白さを初めて知った一年だった。お客様との触れ合い、お客様同士の交流。屋台は舞台であった。毎日様々な出逢いがあった。総てが必然であったことは確かだろう。たわいのない雑談の中に貴重な時間があった。お客様の喜びを共有し、悩みを聞き、涙を共に拭い、嘆きを受け止め続けてきた。酒を出し、料理を作ることが仕事の中心ではなかった。一番大切な事は、お客様の想いに寄り添うことだと気づかされた。

あるお客様の体験談を思い出す。お気に入りのバーのマスターが話してくれたという言葉を、私は胸の奥に大事にしまっている。

〈オレが売っているのは酒じゃない。空気だ〉

 屋台へ向かい、厨房の扉を開けると、グラッパの香りが真っ先に鼻孔を擽った。昨夜グラスを洗わずに帰った後、僅かに残されたグラッパはひっそりと呼吸を続けていた。蛇口を捻りグラスに水を落とす。加水されたグラッパは更に華やかな葡萄の香りを開き、時が戻った。

 通路を挟んだ向かいの店で椅子を引く音が聞こえた。今日最初のお客様が席に着いたようだ。路地を歩く乾いた靴音が二重三重に響いてくる。キャリーバックをガラガラと引く音はホテルのチェックインに向かう出張者だろうか。それとも旅行者だろうか。成すべき一日を終えた人々が、薄暗い黄昏に吸い込まれていく。

 BGMのスイッチを入れた。ビル・エヴァンスのアルバム〈ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング〉が流れ出した。透きとおったピアノメロディーが、天井から逆さまに吊るされたワイングラスを優しく響かせた。

屋台村の一日は今から始まる。

カーテンを開けよう。

開店だ。

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連載小説「黄昏と暁のみろく横丁」 shot.71

裁判を振り返って (PART2)

私が選考決定されたのは、四期生契約期間満了一ヵ月半前の二月中旬だった。それは他の出店希望者も同様だ。もし、出店が認められなければ、既存店舗は残された四十五日間で次の展開を決めなければならない。廃業か、移転か、という重い判断をするにはあまりにも短い時間しか与えられていない。実際問題として、他の営業場所を探して移転するということは、物件調査・物件交渉・事業計画・資金準備・契約・設備工事・営業許可取得・開店準備などを短期間で進めなければならず土台無理な話だ。

継続営業を希望する者は、屋台村以外に移転することなど初めから考えていない。〈次はどの場所にシャッフルで変わるだろうか〉〈次も契約できるだろうか〉ということが最大の関心事項であるに過ぎない。そして、出店決定の通知が届く日まで、不安な想いで待ち続けるしか術がない。合格通知をドキドキして待つ受験生のようなものだ。出店が認められなければ生活の糧を失ってしまう。生きるために、意に反することも敢えて甘受し、デベロッパーの意向に迎合する途を選択するしかなかった者もいただろう。

このように考えると、Tらが明け渡しを拒み、裁判で争う姿勢を見せたのも理解できなくもない。過去、複数回再契約を交わしてきた経緯を考えると、出店継続の期待は高かっただろう。審査に通らないということなど思いもしなかったに違いない。五期生募集を機に、反社会的勢力と繋がりのある店舗を徹底して排除する姿勢で臨んだことは、健全な運営のために必要なことだった。しかし、そのために選んだ手段は、審査の結果〈出店不可〉という通知一つで済まそうとしたことであった。事前に面と向かって退店交渉したとしても、一騒動になる可能性はあっただろう。出物腫物に触れるかのように慎重に扱かうための策として〈契約を盾〉に事務的に済まそうとしたことは、裏目に出てしまった。

もし、Tらと同じ立場に立たされたら私も裁判で争うかもしれない。問題は、借地借家法で借主保護のために規定されている〈六ヶ月の猶予期間〉が実質的に与えられていないことにある。熟慮・準備期間が半年あれば、次の営業場所を見つけることは十分可能だろうし、強行規定である借地借家法の目的にも合致する。

この問題点を、私は中居に提言として伝えた。今までは出店の応募期間が十二月いっぱいで翌年一月に試食審査、二月に出店者決定という流れだった。このスケジュールを前倒しして、出店決定通知、或いは出店不可通知と共に原契約の終了通知を、契約終了日から半年遡る九月末迄に行うべきだと主張した。それに伴い、応募期間は八月末までに、審査は遅くとも九月上旬までに済ます必要があるだろう。そして、〈言った〉〈聞かなかった〉という紛争を未然防止するために、終了通知は文書で行わなければならない。このようにすれば、今後裁判で揉めるような事態は起こらないだろう。

今回の裁判で、ひとつの主要争点となった〈アンケート〉の陳述書について中居は語った。

「終了の話がテナント会であったかどうかのアンケートは、私がさせたものではないよ。あれは弁護士が勝手にしたものなんだ。依頼した以上、全部を弁護士に任せたのだから、私はタッチしていない。

弁護士は自分でアンケート作っておいて、自分で困ってしまったんじゃないか」

依頼人の中居と弁護士の意思疎通が、アンケートに関しては十分ではなかったのだろう。法の規定に則って終了通知が大事だと拘った弁護士の認識が、勇み足に及ばせたのかもしれない。もっとも、判旨の通り、その証拠価値は低かったから問題にならないで終わった。

開業から十五年を経てみれば、起業家を育成するという目的の他に、尊重しなければならない別の目的も生まれてきた。それは既存店舗の健全な経営と繁栄だ。「八戸屋台村みろく横丁」の魅力を高めていくのは、二十六店舗それぞれの営業努力に尽きる。テナントを育てていくという意識を今まで以上にデベロッパーが持つことでこそ、中居が目標に掲げる〈日本一の屋台村〉が現実のものとなるであろう。

                      (続く)

連載小説「黄昏と暁のみろく横丁」 shot.70

裁判を振り返って (PART1)

明け渡し請求訴訟から始まった一連の裁判が終わり、得たものは何だったろうか。一回も欠かさずに公判を傍聴してきて、過去にいくつかの問題点があったことを私は感じた。

 契約が期間を区切った定期建物賃貸借という形態を取りながら、実際には更新の性質が色濃くあったことは否定できないだろう。屋台村開設当初の目的は、起業家の育成というチャレンジショップの意味合いが強くあった。三年で経営ノウハウを学び、街なかの空き店舗へ移転を果たし、中心街の賑わい創出に貢献するという狙いがあったはずだ。そのために三年間という期間を区切り、三年毎に店舗は総入れ替えをする予定だった。

 その目的は一部達成されてきたと言える。しかし、回を追うごとに出店希望者は減少の傾向にある。更に、屋台村での営業を続けたいという既存店舗の希望と、店舗継続を支持するお客様の声が相俟って、多くの店舗が三年毎にただ場所換えをしながら営業を続けてきた。初期から十五年に亘って続いている店も何軒かある。デベロッパーとしては空き店舗を屋台村内に作るわけにもいかず、出店継続に当たっては、希望すればほぼ適えられるという契約外の慣例も事実としてあった。

 一方で、契約はあくまでも三年間で終了し更新の性質がないわけだから、再契約のためにはデベロッパーの意向に沿った営業をしなければならないというプレッシャーが屋台店主にはあったはずだ。そこには〈選定する立場〉というデベロッパー側の驕りはなかっただろうか。契約は貸主・借主双方共に対等の立場にあるというのは法律上の建前論であって、契約締結に至るまでの主導権はデベロッパーにあり、借主である屋台店主は常に弱者の立場に置かれていただろう。

                      (続く)

連載小説「黄昏と暁のみろく横丁」 shot.69

報復

予想通り、事件は起きた。四月十日、月曜のこの日、私の店は定休日だったので翌日になってから事の顛末を聞いた。

真夜中十二時過ぎ、屋台村敷地に爆音を立てたバイクが一台乱入してきた。異変に気づいた店主らが数人、バイクの走行を阻んだ。運転していた男は敷地の真ん中にバイクを停め、〈そろそろ〉に向かった。

「綾ちゃん、綾ちゃんは居るか」

男は戸を開け、顔を店内に突き出して言う。

綾子ママは怪訝そうに店の奥から出てきた。

「お前が綾ちゃんか。白い仕事着を着ている奴の店ってどこよ」

声を凄めて威圧的に尋ねる。どこで知ったのか、普段、白いコックシャツで仕事する私を探しているのか。それとも証人尋問の日、上下白の服装だった綾子ママの店を確認しに来たのか。その両方なのか・・・。

「知らない」

怯えたように綾子ママが答えると、男はドアを閉めて立ち去った。

事件を聞かされたその直後、私は中居の携帯電話に連絡を入れた。

「昨晩の事件は耳に入っていますか。直ぐに危機管理体制を整えて欲しいんです」

「話は聞いた。でも、今出張中で宇都宮に来ているから私は直ぐに対応できない。明後日戻るまで、危険がないように現場対応してもらいたい」

「では、警察に相談して対処します」

「頼む」

早速、所轄の警察署に電話をかけた。警務相談課と話が繋がり、裁判から続く一連の経緯を伝えた。連絡体制を警察内部で密にとって直ぐに出動できるようにするから、身の危険を感じたら迷わずに通報するように、と言われて安心した。110番して「みろく横丁です」と言えば、パトカー二台が出入り口の二ヵ所に赤色灯とサイレンを消して急行する手筈が整った。

出張から戻った中居が、私のランチ店に来た。店に来る前に、警察のマル暴(八戸警察署刑事二課)と相談してきたらしい。警務相談課と刑事二課が連携して対応してくれることになった。私は、屋台村全店に向けての危機管理対応と注意喚起を促す文書案を中居に見せた。一読した中居は顔を上げて、手を叩いて言う。 

「そう、さっき警察署でも言われてきた。現行犯で逮捕するのが一番望ましいそうだ。もし、同じことが起きたらどうするか。皆が理解できるように分かりやすく書いてくれないか」

 私は引き受けて、次の文書をテナント会議の際に配布することになった。

〈危機管理対策について

  みろく横丁に深夜バイクが乱入したり、脅しとも取れる言動を屋台店主に投げかけるという事案が発生しています。今後、もし同様の事案があった場合には、どのように対処すべきかを念頭において、相互協力しながら日々の営業に励みましょう。

  いたずらに不安を募らせる必要はありません。あくまでも万が一の不測事態が発生した場合に備えて注意喚起するものです。既に、八戸警察署刑事第二課と警務課相談室との連携体制を整えています。警察署からのアドバイスを基に、次の点を徹底しましょう。

①危険を感じたら躊躇せず、すぐに110番通報する。

②防犯笛を吹いて近隣の店舗に報せる。笛を聴いた店舗は、更に笛を吹き全体に報せるようにする。そして、可能な限り問題の店舗(場所)に駆けつける。

③店舗内に居座られ、言いがかりをつけられるなどで困ったときは、携帯電話のボイスメモ機能やICレコーダーなどで録音する。携帯電話で録画ができれば、それも行う。

  バイクが乱入したときの対処法について、シュミレーションしてみましょう。

1、①②の通り行動しましょう。

2、みろく横丁の出入り口四箇所(三日町側・六日町側・花小路二箇所)を長机等で封鎖しましょう。目的は、被害拡大の防止(お客様を始めとした安全確保)と現行犯逮捕です。

3、バイクが停止したら、急発進などの危険がないようにイグニッションキーを抜き取るか、右ハンドルグリップにあるキルスイッチを押してエンジンを止めましょう。

4、警察が到着するまで、可能な限り犯人の身柄を確保しましょう。

 自身の安全確保が最優先です。以上の行動は、危険がない範囲でとってください。

 現行犯逮捕につなげることで、以後の安全を担保できると共に、毅然とした態度でみろく横丁全体が臨んでいる姿勢を示すことによって犯罪抑止力に繋がります。

  例えば、バイクの進入行為は刑法上罰せられる建造物等侵入罪です。長机等にバイクをぶつけることは器物損壊罪。「そこをどけ!どかないとぶつけるぞ!」と言われたら脅迫罪。バイクが身体に触れただけで暴行罪。びっくりして転んで怪我をしたら傷害罪にあたります。

  店内で脅す言葉を言われたら脅迫罪。お客様が通常のサービスを受けられない状況は威力業務妨害罪。退店を命じても立ち退かない場合は不退去罪にあたります。〉

翌日以降、綾子ママが住むマンション近辺に、不審な男が待ち伏せするかのように出没するようになった。身の危険を感じた綾子ママは、安全確保のためにしばらく実家に帰るという。脅迫まがいの威圧的な嫌がらせに屈するのは、相手の思う壺で問題の解決にはならない。皆で協力して、店舗の警護や送迎をするから、と言っても綾子ママは怖がって聞き入れなかった。数日後、綾子ママは店を男性スタッフ一人に任せて実家に帰ってしまった。

 眼に見えた妨害は、その後起きていない。バイク乱入時にナンバープレートの番号を店主の一人が控えていたが、警察に照会すると偽造プレートだった。チンピラがTの指示で嫌がらせに来たのは間違いない。しかし、証拠はない。

いつ捕り物騒ぎが起きるか、と戦々恐々の日々を重ねたが、事態は次第に沈静化に向かっていった。何事も起こらない平穏な日が当たり前になった。しかし、ただ一人、綾子ママだけは違った。Tらが退去しないことで店を半年営業できなかった上に、やっとオープンを果たしたのに自分の店へ来ることができない。なんとも大きな犠牲を一身で受けてしまった。綾子ママを待っているお客様のために、笑顔で店に立ち、安心して営業できる日が早く来ることを願って止まない。

(平成二十九年夏、綾子ママの笑顔が〈そろそろ〉に戻ってきました)

                                  (続く)

連載小説「黄昏と暁のみろく横丁」 shot.68

判決  (PART3)

続いて、前訴提起に違法性があったかどうかについて述べている。

「原告らは虚偽の事実を捏造して訴えを起こしたこと自体が不法行為であると主張する。

しかし、先に認定したとおり、九月テナント会で終了通知がなかったと認めるに足りない。更に前提事実と証拠等によれば、賃貸期間は平成二十八年三月三十一日で満了すること。無断譲渡については、出店申込みを拒絶したところ他人への譲渡通知があったため、被告は契約解除の意思表示をしたこと。原告らは明渡しに応じず、前訴で定期建物賃貸借契約の成立自体を否認していたこと、以上の事実が認められる」

「上記認定事実によれば、被告会社が契約終了したことを前提として、明渡し請求と損害金の支払を求めたことが、事実的・法律的根拠を欠くもので、被告会社がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて前訴を提起したとは認められず、その他裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものとはいえないことは明らかである」

「仮に、九月テナント会における終了通知の事実が虚偽であったとしても、前訴を提起した時点では、既に書面による終了通知を行っており(前提事実)、通知から六ヵ月を経過すれば明渡しを求めることができるところ(借地借家法三十八条四項)、原告は定期建物賃貸借契約の成立を否定して、期間の定めのない賃貸借契約の成立を主張して明渡し義務を全面的に争っていたのであるから、九月中に明け渡されることが明らかな状況にはなく、明渡し義務の発生時期はともかくとして、明渡し請求権の有無を裁判において確定させる必要が大きかったものといえるから、前訴が裁判制度の目的に照らして著しく相当性を欠く訴え提起といえないことは明らかである。

従って、被告会社による前訴の提起が違法であるとは認められない」

アンケート作成提出行為の違法性については、次のような理由で一刀両断的に排斥している。

「テナントに対して虚偽の陳述書を作成するように働きかけた事実を裏付ける的確な証拠はないこと。更に、九月テナント会で口頭の終了通知がなかったとは認められないこと。

そして、アンケートは印字された質問事項に丸を付けたり、日付を記入するだけのものであって、記入者が〈九月テナント会で終了通知がされた〉と受け止めた可能性も否定できず、記憶に反して内容虚偽の記載がされたものと認めるに足りない。

仮に、被告会社からの強い働きかけによって、自らの記憶に反する内容虚偽の陳述書を作成した者がいたとしても、アンケートの体裁や記載内容に照らすと証拠としての価値はそれほど大きいものではなく、前訴の審理において積極的な反証活動を行えば足りるものであること」

「また、アンケートは前訴の証拠として使用する目的で作成され証拠提出されたが、裁判外では利用されていない。

更に、前訴については、被告会社が平成二十八年九月二十三日の明渡しまでの損害金の請求などを全部放棄しており、原告らにおいて、九月テナント会で終了通知があったことに基づく直接的かつ経済的不利益は全く受けていないことを踏まえると、例え陳述書の一部に内容虚偽の記載があったとしても、その作成提出行為が不法行為上違法なものであるとは認められない」

「以上によれば、原告らの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。よって、主文の通り判決する」

胸の透くような明快な判旨だった。

昭和六十三年一月二十三日の最高裁判例を踏襲したもので、敗訴確定か放棄したかに拘らず、裁判制度の利用を過度に抑制してはいけないという基本的人権の保障に則ったものだった。

屋台村側としては、何より早期の明渡しを求めて前訴を提起したのであり、相手方が予告通り九月二十三日に退去した以上明渡し請求訴訟を続ける意味はなくなった。

相手方の訴訟戦略が十分に練られたものではなかったことも、結果的には勝訴に繋がったと思う。判旨にあるように、相手方は前訴での反証活動が足りなかっただろう。反訴での立証活動も十分ではなかった。

定期建物賃貸借契約の成立を否定して、期間の定めのない賃貸借契約の成立を主張するというのならば、まず借地借家法三十八条所定の書面が適法に交付されたか否かを争うのが初動であるべきだっただろう。そして、過去の契約締結の実態を遡って調査すれば、実質的には期間の定めのない契約と看做すべき要因を見つけられたかもしれない。

おそらく、仙台高等裁判所への上告はできない。地裁の事実審と違い高裁は法律審だから、法律の解釈適用の誤りを指摘するような隙間は見つけられない筈だ。仮に上告しても、上告理由がないとして却下されるだろうと思う。

   (続く)

連載小説「黄昏と暁のみろく横丁」 shot.67

判決  (PART2)

次に、不法行為があったかどうかという今回の重要な争点について、双方の主張が挙げられている。

原告・三店舗側の言い分は、九月テナント会で終了通知をしていないのに虚偽の事実を捏造したこと。無断譲渡などしていないのに、虚偽の事実を捏造したこと。この虚偽に基づいて提起された裁判は、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くこと。

そして、終了通知が行われた外形を作るために、虚偽のアンケートを作成させて証拠提出したこと。

以上により、不法行為が認められると主張した。

これに対し被告・屋台村側は、次の三点を以って不法行為の成立を否定した。

無断譲渡については、賃借権の譲渡を受けた旨の通知を受けたが、予め譲渡について承諾を求められていなかったから、そのように認識したこと。

前訴陳述書で提出したアンケートを除いても、契約成立の事実と終了要件充足の事実は裏付け可能であり、認容判決を得られると信じて提起したのだから不法行為を構成しないこと。

アンケートを作成した被告テナントの殆どは、明渡し請求に関して利害を有さない第三者だから、原告らを退去させる動機も特にないのでアンケートの信用性に疑いはないこと。

裁判所の判断は、まず不法行為の成否について検討されている。

九月テナント会で終了通知が口頭で成されたか否か。

「テナント会の配布資料には、終了通知に関する記載がない。アンケートに、一方で終了通知はなかったと記載した店舗があった。上野綾子ともう一人が署名捺印した陳述書(甲47・甲48号証)には〈アンケート記載内容は虚偽で、被告会社の従業員が内容虚偽の陳述書に署名押印するよう頼んだ〉と述べる部分がある。

本人尋問で上野は、口頭で終了通知を受けたと述べるものの、具体的な内容や通知の態様については曖昧な供述しかできていない。しかし、少なくともアンケートは他のテナントと話し合って、その時点での自らの記憶に従って記載したと明確に述べている。

更に、陳述書(甲47号証)は、〈これに署名押印すれば訴訟を取り下げる〉と言われてそのようにしたが、その記載内容は誤りであると明確に述べている。また、もう一人の陳述書(甲48号証)と一言一句同じ内容が印刷された書面にただ署名押印されただけのものであること等を併せ考えると、二通の陳述書(甲47・48号証)の記載内容は信用できない」

「テナント会配布資料には、当日実施される内容として七十項目も列挙されているのに終了通知に関する記載は全く見当たらない。

一方で次期テナント募集の申込みが、平成二十七年十月一日から開始されることからすると、その直前の九月テナント会で口頭説明があった可能性も否定できず、配布資料に項目がなかっただけで終了通知がなかったとまでは断定できない」

「もっとも、アンケートは丸を付したり、日付を記入するだけのもので、終了通知とされる口頭での具体的な説明内容や態様は明らかではない。一方で原告ら作成の陳述書(甲47・48号証)が存在する。

これからすると、九月テナント会に於いて口頭での終了通知がされたか否かについては真偽不明と言わざるを得ない」

裁判所は、終了通知はあったともなかったとも言えないという曖昧な判断を下した。

                                   (続く)

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