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連載小説「黄昏と暁のみろく横丁」 shot.34

流しソーメン大会  (PART2)

翌日の夕方、これまでに感じてきた疑問点を文書にまとめて他の屋台店主数人に見せた。ある店主が言う。

「この意見は、皆が知っておいたほうがいい」

彼は、全店舗分のコピーをとりにいった。

夜半になって閉店作業をしていた時には、別の屋台のママさんが静かに寄ってきて、話しかけてきた。

「ちょっと。読んでいて背筋がぞくぞくしたわ。言いたいことをズバッと書いてくれてすっきりしたわ」

 別の日に、ある女性店主から呼び止められて話をした。

「今までは誰も何も言えなかったのよ。誰もが同じ思いを持っていてもね。だけど、ここで営業続けるためには必要なことだったの。店主の中には、屋台だからこそ自分の店を持てる人もいることを知って欲しいわ」 

皆の意見を代弁したようなものであることは間違いなさそうだ。

 内容は、まず〈流しソーメン大会〉開催意義について。第二に販促費の徴収方法とイベント経費の公開について。第三に〈屋台村宣言〉朗読の必要性について。

最後に通路補修についてだ。これは、雨天時になると目の前の通路が池のようになってしまい通行に支障をきたすので、その改善を求めたものだ。排水溝への勾配がなく窪んでいるため、近隣の店舗が交替で排水溝へ雨水を流し込む作業を強いられている。デベロッパーは契約上、テナントに対して安全に、支障なく営業させる義務があるので、共用通路の補修が必要だと訴えた。

 この文書は後日、中居の目にも触れることとなり、会議での宣言朗読は以後割愛されるようになった。疑問に感じたことは先ず伝えることが大事だと思った。長く続けられてきた習慣は、客観的な視点で見詰め直すことが難しい場合もあるだろう。新参者の私の意見を取り入れてくれた中居の判断は、経営者のあるべき姿だと思った。屋台村を生み出し繁栄させていく重責を担う立場だからこそ、全体を統率するために良かれと考えたことが、結果としてテナントの反感を招き勇み足となってしまった部分もあるだろう。

 しかし振り返ると、私自身も反省すべき点があった。私は長年飲食店を経営してきたが、屋台店主の中には初めて起業した者も居る。飲食店の基礎、接客の大切さを一から指導するために必要だという考えがあって始められたに違いない。ただ、指導する立場が上で教えを請う立場が下という構図が、年月を経るごとに出来上がってしまったのも事実だろう。

                       (続く)

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23isback | 2020-05-09 22:21 |
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