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連載小説「黄昏と暁のみろく横丁」 shot.41

イベントの見直し

〈大のりまき大会〉〈流しソーメン大会〉に続いて、十月はこれも恒例の〈ロールケーキ大会〉が歩行者天国の日に合わせて開催された。海苔巻きのときと同様、通路にテーブルを並べて参加者と一緒にロールケーキをデコレーションするというものだ。盛況のうち無事に終わった。

翌日、以前から食のイベントの開催意義について疑問に思っていたことを文書にまとめて中居に提出することにした。

 十二月のテナント会では、それについて意見交換がなされた。食のお振舞いという従来のイベントをゼロから見直して、テナントの主体性を尊重した販促イベントへ転換すべきであるという私の意見は、一部役員の曲解があったものの、テナント全体に受け容れられた。来春からのイベントをどのようにするかを年明け二月のテナント会で決することとなった。

 この会議に先立ち、屋外で開催される食のイベントの是非について保健所へ助言を伺いに行った。担当のグループリーダーは丁寧に説明をしてくれる。屋台村で過去、食のイベントが開催されてきたことは勿論承知のようだ。無償で振る舞うイベントは食品衛生法上の臨時営業許可が必要なのかどうか聞いてみた。

「営業とは不特定多数を対象に反復継続して行われるものだから、その必要はありません。参加費を取るか無償なのかは本来関係ないことです。例えば料理教室を考えてみてください。参加者が一緒になって料理を作りますよね。それにはいちいち営業許可は不要なわけです。今までの屋台村のイベントはそれと同じで、参加体験型だから、そもそも食品衛生法の適用外です。学園祭の出店もそうですね」

「学園祭などでは臨時営業届けを出す場合が多いようですが、では届けは必要ですか」

「ぶっちゃけた話、〈こういう催し物をやります〉と手を挙げてもらうことが届け出るということです。届けがあれば〈はい、分かりました〉と受け付けるだけのことです」

「仮に営業許可を申請した場合、屋外での米飯類の提供は禁止されていますよね。包丁でカットする調理も駄目ですよね。それでいくと海苔巻き大会はどのように考えればいいのですか」

「さっきの通り、特定参加者が一緒になって作る参加体験型イベントだから法の適用外なわけです。仰るとおり、もし営業許可の申請があっても許可は出ません。海苔巻きのカットは・・・うーん、屋外ではなくて各店の厨房で切り分ける方が本当は好ましいですね」

「許可が必要か不要かという観点ではなくて、衛生上の安全確保という点ではどうなんですか。参加体験型だったら健康被害などのリスクがあるイベントでもオーケーなんですか」

「衛生上のリスクを避けるために食品衛生法がありますが、営業ではないので行政としては好ましくないと思ってもやめろとは言えないんです。かといって奨励もできない。心苦しいのですがそのようなグレーゾーンがあることを理解してください」

「万が一、食中毒などの健康被害が発生した場合は処分などがありますか」

「行政処分はありません。ですが、医療機関などから報告があった場合は調査に入ります。それは私たちの義務です。調査に入った以上は被害状況を公表しなくてはなりません。

 先ほど、参加体験型だから規制はないと言いましたが、それでいくと〈流しソーメン大会〉はできれば開催して欲しくないですね。参加者は一緒に調理をするのではなく、ただ樋に流れてくるソーメンを食べるだけですから参加体験とは言えません。それに、近年各地の流しソーメンで死亡事故など健康被害の発生が増えています。流しソーメンは加熱調理直後の料理ではありませんし、加熱し続けている料理でもないので相応のリスクがあることを考えてください」

踏み込んだ話を聞いて、食のイベントの在り方を考え直さなければならないと思った。リスクを何処まで軽減できるか、事故があった場合はどのような社会的責任を負うのか。

営業停止などの処分がないとしても、一度事故が発生したら世間は屋台村全体が不衛生だというレッテルを貼るだろう。そして、その風評を払拭することは容易ではないことも想像に難くない。それらの問題があることを認識した上で開催の意義と比較衡量すべきであろう。

 私の意見は決まった。今までの食のイベントは全面的に廃止するしかないだろう。

                       (続く)

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