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連載小説「黄昏と暁のみろく横丁」 shot.66

判決  (PART1)

判決言渡しの日がとうとう来た。この物語の始めに書いた通り、屋台村側は勝訴した。この日の傍聴人は、私の他にTと相方のチンピラ風の男だけだった。弁護士も出廷しなかった。私はTらと鉢合わせにならないように注意して法廷に入った。

他の裁判事件の判決も立て続けに行われるため、傍聴席には十人ほどがばらばらに座っている。裁判官は主文だけを次々に言渡していく。自分たちの判決を訊き終わった関係者が入れ替わりのように立ち去っていく。判決理由まで聞けると思っていたので、肩透かしのようであっけなかった。Tらも私も〈もう終わったのか?〉という顔で退廷した。

まずは第一報を、と思い中居に電話した。既に弁護士から判決内容を聞いていたようだった。

「ご苦労さん」

中居は電話口で私を労ってくれた。屋台村へ向かい、〈鳥将〉の勝子ママと久美ちゃんに報せた。私の表情を見て、話す前に勝訴を覚ったようだ。喜びと安堵で皆笑顔になった。今日、Tらが来ていたことを話す。

「裁判は勝ったけど、Tが控訴するかどうかは分かりません。問題は判決が確定した後の嫌がらせです。何らかの妨害があるかもしれないので、この後が大事です」

そう、過去に営業妨害まがいの嫌がらせをしてきたTだけに、何が起こるか分からない。控訴を断念した場合、裁判外の手段で威圧してくることは十分に考えられる。用心するに越したことはない。

数日後、中居から判決文を手渡されたので、舐めるように熟読してみた。

まず、前提事実(争いのない事実及び証拠等により容易に認められる事実)として、

「原告三店舗は契約締結の際、借地借家法三十八条二項所定の説

明書面を交付された」

と書かれている。

原告は契約成立の有効性については具体的な争点にしなかったためか、裁判所は契約締結上の瑕疵は被告になかったと簡単に認めている。物語の始めの方で説明した通り、厳密には書面の体裁上問題があっただろうが、それには一切触れていない。私はホッとした。相手方が気付けば、重要な争点になっていた筈だからだ。

また、借地借家法三十八条四項所定の終了通知については、

「平成二十八年三月三十一日をもって期間満了により終了する旨を、同年三月十七日到達の通知で成したが、四月一日以降も原告三店舗は明け渡さなかった」

とされている。以上の二点は争いのない事実だ。

続いて前訴(建物明渡し請求訴訟)の概要だ。

屋台村側の主張は三点ある。平成二十七年九月八日のテナント会で、口頭で終了通知をしたことを前提に期間満了により契約は終了したこと。予備的請求として、仮にそれが認められないとしても、三月十七日到達の通知により契約は九月十七日には終了し、以後の明け渡しを求める変更申立書を提出したこと。三点目として、無断譲渡による解除により、契約は終了したこと。

前訴陳述書のアンケートについては、顕著事実として次のように書かれている。

予め印刷された質問事項に回答する形式のものであること。

「終了することについてテナント会で告知を受けましたか?」の問いには〈はい〉に丸が付され、「告知を受けたテナント会日付」には〈平成二十七年九月八日〉と記入され、署名押印がされていること。

前訴においての三店舗側の主張は、顕著事実として次の三点が書かれている。

定期建物賃貸借の成立自体を否認して、期間の定めのない建物賃貸借契約が成立したこと。

無断譲渡の主張は虚偽であること。

仮に、定期建物賃貸借契約が成立していたとしても、九月テナント会での終了通知は虚偽であるから、書面による通知から六ヵ月を経過する九月二十三日までは適法な賃借権があること。

                                   (続く)

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