カートをみる ご利用案内 お問い合せ お客様の声 サイトマップ

 

避けるべき話題

酒席でトラブルの元になるから避けるべき、と言われている話題がある。

政治・宗教・スポーツの三つだ。

お客さんがその話題を振ってきたときには、店主としては神経を使う。思想信条の傾向を知ってる馴染みの客ならば、ただ話を聴いて頷いていればよい。他に客が居なければ、曖昧に同調していれば特に問題ない。時として、自分とも通ずるものを感じれば、話は盛り上がる。

人は感情ある生き物が故に、自分とは相容れない信念をお持ちの客とは、できればその手の話題は避けたいところだ。

オリンピックまで一週間を切り、昨晩は面倒くさい客が来た。還暦過ぎの男性だ。

開催することは感染抑止に繋がるのだと、その人は主張する。

「みんなオリンピックを楽しみにしているんだよ。始まれば家でテレビ観戦するから、外に出歩く人も減って感染者も減るんだ」

なるほど、出歩かない人は感染リスクは減るだろう。でも、【みんな】とは誰のことだろう。

「金メダルが掛かる試合では盛り上がって、みんなが応援するだろう」

私はスポーツ観戦そのものに興味がない。他に客も居ない。つい、いらぬことを言ってしまった。

「興味も無い人や、そんな気持ちの余裕が無い人も居ますよね。医療従事者や、明日の生活もままならない人とか。そもそも、観たいという気持ちが私にはありませんよ」

「いや、それはマスターみたいに捻くれた一部の人だけだよ。みんなは選手の活躍を楽しみにしているんだ。世界中でテレビ観戦すれば、感染は収束するよ」

それどころじゃない人も居るはずだが・・・。

「みんなが家の中に居て、テレビで応援するから、感染は確実に減るんだ」

このまま聞き流しておけば良かった。

「世論が揃いも揃って、同じ方向に向くでしょうか。人間って、そんな単細胞なんですかね」

自分が単細胞だと言われたと、彼はカチンときたのだろう。蔑む眼差しで断定した。

「いや、それは違う。みんなはオリンピックに感動するんだよ。それが普通なんだ。マスターみたいに捻くれたマイノリティーも中には居るだろけどね。でも、それはごくごく一部の人だけだ」

もういいや。相手にするのが面倒くさくなった。【みんな】って、彼の周りの人のことだろうか。それとも、世界中の圧倒的大多数の世論のことだと確信しているのだろうか。

これ以上ヒートアップしないように、話題を変えた。自分の主張が常に正しい、という観念に縛られている人との会話は不毛なだけだ。

W.リップマンの『世論』を思い出した。

『我々はたいていの場合、見てから定義しないで、定義してから見る』

彼の頭の中にあるステレオタイプは、なかなか手強いようだ。

コメント

[コメント記入欄はこちら]

コメントはまだありません。
名前:
URL:
コメント:
 

ページトップへ